このように適切な軸を意識することによって、無駄な分析を行うことを避けることができます。
軸を見つけ出し、設定するということは、価値基準を設定するということに他なりません。
そして的確な軸があれば、その分析から導かれるメッセージも的確なものとなるのです。
ビジネスは意思決定の連続によって成り立っています。
その意思決定の過程を可視化し、シミュレーションするツールがディシジョン・ツリーです。
ディシジョン・ツリーのコンセプトはゲーム理論におけるゲーム・ツリーから来ています。
ディシジョン・ツリーは枝と点で構成され、スタート地点から枝が伸び、意思決定点で枝分かれしていきます。
学校で習ったいわゆる「樹形図」の形となっているのです。
非常にシンプルな形ですが、ビジネスにおける意思決定に際して、現在の状況と将来の選択肢(オプションと呼ぶ人も多いです)を整理・検討することができるのです。
たとえば、こんなに大きく重要な意思決定でも単純化して使用することができます。
この場合のスタート地点は「自社が他社から買収の提案を受けた」です。
ここが分岐し、「買収提案を受け入れる」のか、「拒否する」のかという意思決定点へと二手に分かれています。
そして買収提案を受け入れるのであれば、買収者に株式も役員も過半数を渡して子会社になってしまうのか? それとも株式と役員の過半数は渡さずに、買収提案を部分的に受け入れるのか? という意思決定について比較をすることができます。
また、「買収提案を拒否する」という意思決定を選択した場合には、「他の対抗する買収者を探す」か「独立路線で買収者に対抗する」という選択肢を比較したうえで意思決定をすることになります。
ディシジョン・ツリーを描く意義は、現在の状況と選択肢を見える形で描き出して理解を深めることにあります。
そのため一人で意思決定のシミュレーションを行うときのみならず、他社との交渉に臨む際には、交渉の前に相手の出方とその対応方法について、チームでディシジョン・ツリーを用いてシミュレーションし、チーム内でのコンセンサスをつくっておけば、交渉の場において意思決定が混乱することを防ぐことができます。
私も実際にM&Aや契約交渉の事前準備では、まず自分でディシジョン・ツリーを描くことで頭の中を整理し、次にチームのメンバーの前でホワイトボードにディシジョン・ツリーを描き、他に考えるべき選択肢のモレがないかを考え、選択肢の優劣についてメンバーで検討していました。
こうすることによって考慮すべき選択肢のモレを確認することができたのです。
大きな意思決定から小さな意思決定まで、思考の整理を行うためにディシジョン・ツリーを描きましょう。
乱雑に描いても構いません、自分の意思決定の補助ができればよいのですから、まずは描いてみることから始めましょう。
効率的に分析を行っていくためには、経営の基本的なフレームワーク(型)を頭にインストールしておくべきです。
これらのフレームワークは経営学の先人達が考え出し、今まで生き残ってきたものなので、覚えておいて損はありません。
これから説明する3Cや4Pは最低限の基本的なフレームワークであり、まずはそのフレームワークで軸を考えると分析が進みます。
歌舞伎役者の言葉に、「型を知れ、そうすれば型破りになれるから」というものがあります。
なぜ、フレームワークを頭に入れておくべきかというと、軸をゼロから自分で考え出して、モレがなくダブリがないように、つまりMECEにブレークダウンしていくよりやさしいからです。
何もフレームワークを持っていない人に「自由にやっていいから」というと、ほとんどの人は自由の刑に処されてしまい動くことができなくなってしまいます。
まずはフレームワークを使って型を考えてから、より詳細な軸にブレークダウンするというパターンを自分のものにしましょう。
経営分析の基本となるのが、3Cのフレームワークです。
企業をみたら、まず3C。
どんな顧客(Customer)なのか?競合(Competitor)はどこなのか? 自社(Company)の強みは何なのか? まさに基本です。
*自社の能力という意味でCompanyではなくCapabilityという場合もある次はマーケテイングの4Pです。
顧客に対してモノやサービスを販売する際に検討すべき軸です。
いつでも頭に入れておいて、目の前のモノやサービスについてこの「軸」で説明できるようにしましょう。
そして、経営学では必ず出てくるハーバード大学ビジネススクールのM教授の競争要因です。
「業界構造」という軸で考えたときに、どんなプレイヤーが存在するのかが表されています。
ぜひ頭に入れておきましょう。
わからないことがあったらバラバラに分解して分析していくというのは一つの方法です。
問題を前にしたら、原因追求のためにブレークダウン(分解)を行っていきましょう。
たとえば、売上の落ちてきたある製品の原因追求を行ってみましょう。
状況をブレークダウンしてみます。
何のフレームワークもなく思いつきでブレークダウンするとモレが出てしまいますので、既存のフレームワークを使って分析してみましょう。
この場合は、4Pのフレームワークを使ってみます。
売上が落ちてきた原因はいろいろと考えられますが、次のようにバラバラに書くだけではモレやダブリが出てしまいます。
バラバラになっていた原因をフレームワークによって整理してみます。
ブレークダウンすると次ページのようなツリー構造になりました。
ディシジョン・ツリーでは意思決定のために、現在の状況に対する選択肢にブレークダウンしていきましたが、今度はこれを原因追求のために使っています。
ディシジョン・ツリーと同じツリー構造になっており、イシュ一・ツリー(事象ツリー)と呼びます。
他にもブレークダウンを行うときに便利なフレームワークがあります。
それが「会計」と呼ばれるものです。
会計はルールが定まっており、「勘定科目」というラベリングが最初からされているので便利です。
企業の収益性を考える一番シンプルな計算式はこれでした。
余談ですがコンサルテイングにおいては、企業の売上高を上げるということは、ほとんどできないと考えられています。
売上高を上げられるケースは全体の一割以下であり、基本的には販売費及び一般管理費を下げる方法を模索することが多いのです。
このように問題の原因を分析する際は、会計や既存のフレームワークを用いてブレークダウンしていけば、効率的にモレなくダブリなく要素を抽出することができます。
今まで見てきたように3Cや4Pのような既存のフレームワークは、分析の初期段階における軸としては有効ですが、そのフレームワークはあくまでビジネスを簡略に表したものです。
実際のビジネスは、より複雑なものであることを忘れてはいけません。
既存のフレームワークに慣れてきたら、次は自分の創造性を発揮して、最も有効な軸を模索してみましょう。
既存のフレームワークの型が素早く頭に浮かぶようになったら、今度は「型破り」になっていくのです。
そこに新たな気づきがあるかもしれません。
では、試しに一つ考えてみましょう。
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